SIGとはスイスの銃器メーカー、シュバイツアー・インダストリー・ゲゼルシャフト社の略である。ザウエルとは独逸の製造所の名前である。SIGは通称シグゥと呼ばれる。1940年頃に生産された銘銃SIG・P210はあまりにも有名だ。私はサンフランシスコのリヴァモアという射撃場で、日本人を集めてシューテイング教室なるものを開催していた。GUN誌の『硝煙のアドベンチャートリップ』というCMコピーで、マニアが十数人集まり、米国へ射撃ツアーに出かけた。一人平均1日で、500発は撃っていた。銃は100丁ほど用意されていたが、やはり人気の銃は休むことが無かった。ベレッタ92Fは1日で2000発ほど撃たれたと思われる。私の経験から生まれたひとつの結論は、最近のヨーロッパの銃は耐久性に欠けるということだった。しかしSIGだけは別格だった。SIG P220(シングルカーラムモデル)と米国の45オートは休み無く撃ち続けても、確実に作動した。オイルの1滴も必要としなかった。古い銃なので撃ち数制限があったが、ヨーロッパの古い銃も、ジャムは1度も無かった。SIG以外のヨーロッパの新型オートマチックは、オイル無しで数百発撃つと、頻繁にジャムが発生した。レンジのテーブルで何度も分解クリーニングをした。 P38やルガーP08、ベレッタM1934等、昔の銃には格調というか風格と言うか、芸術的な美しさを感じた。夜間行った銃の分解講座でも、圧倒的な人気があったのは古いヨーロッパの銘銃達だった。そんな銃で遊んだ私には、SIG P226は、何か物足りなさを感じる。あまりにも綺麗にまとまったデティルなのか、プレス加工されたスライドの性なのか、何か無機質な冷たさを感じる。 冒頭に述べた銘銃SIG・P210は、スチールブロックから削り出された。スライドやフレーム等も、複雑な工程も全て削り出された。P38やP08のように、極めて高精度であり、いわゆる魅力的な銃のひとつであった。生産性で問題になり、P220の登場となる。スライドは鉄板をプレスして生産され、フレームは軽合金で鋳造された。いわゆる魅力の薄い銃と私が表現した。 凹凸の無いプレスされたスライドと、軽量化されたフレームは、スムーズにホルスターから取り出され、確実にグリップピングされ、瞬時にサイトを合わせる、機能的なデザインでもある。多発する武装都市犯罪や、武装テロリストへの熱いカウンターには、芸術的な美しさが・・・では済まされない。貫通力の大きい9mmパラベラムを15発も装備し、テロリストのボディアーマーめがけてラピットファイヤー。2発当たれば、テロリストはダウンする。特殊部隊のサイドアームにノスタルジアは要らない。銃は道具であり、機能は何時までも追及されていく。
(2008.6.2[Mon]) |