乾いた風が冬場の冷たい空気を揺らし、ロングコートの裾をハタハタとなびかせる。急がないと今夜も星明りの天井だと思っていた頃,丘を登りきった所で、遠くに宿の灯りがチラチラと揺れるのを見つけた。疲れ切った体と愛馬キャサリンに鞭を入れ早足で灯りを目指す。 宿屋が1軒有るだけのさびれた集落だったが、小さな酒場にはピアノがホンキーな音をたてていた。弾いているのは太った親父。少し昔は美人だったと思えなくも無いブロンドも一人いた。まだ早いのか客はいなかった。軽く1杯あおって2階の宿に上がった。愛想の良い太った主人に通された部屋は,大きいバスタブにお湯がなみなみと張られていた。さっきの女はどうかねと聞かれたが、疲れていると断った。 いきなり風呂に入ることをやめたのは、何かがおかしかったからだ。下の酒場では客もいないのにピアノ?二人で楽しんでるようでも無かった。 軽いノックが響いた。「ローラよ、シーツ持って来たわよ」どうもさっきのネエチャンバアチャンのようだ。「今風呂に入ったとこだ」と嘘をつき、ホルスターからSAAシビリアンを抜き、左手の親指をハンマーに乗せた。コッキングの音を聞かれないようにしたのだ。やはり乱暴にドアが蹴破られ、短く切ったサイドバイサイドのショットガンを持った親父が飛び込んできた。叫びながらバスタブ目がけてズドーンと撃ちこんだ。バスタブが裂けお湯が噴出した。俺がバスタブいないのに驚いた親父は、もう片方のシェルを撃つひまも無く、吹き飛んだ。俺の正確なツーハンドサミングの一撃が顔の真ん中に命中したからだ。女はシーツに隠していたライトニングを、慣れない手つきで持ちながら飛び込んできた。何だこいつらは、まるで素人じゃないか。追剥強盗の根城のいかさま酒場にしては、獲物を捕捉しないで飛び込んでくるなんて。ゆとりを持って右の肺を撃ち抜いた。聞きたいことがあるからだ。この辺りでは旅人が頻繁に消息を経つ。連邦政府からの依頼を受けてきたのだ。 (続く・・・次回のウエスタン関係のテーマまで)
国際出版褐至ァGUN誌に掲載
(2008.2.17[Sun]) |